第6話 手本を見抜く    岩井笙韻

さて今回は続き物。手本を見るときの注意点を挙げてみましょう。まず初めに、『手本を見る』と言ったって、じーっと見てるだけでは何事も起こりません。目的が無くてはダメ。目的は、手本に出来るだけソックリに書くことです。
 これは、当たり前のことですが、とても大きなポイントなんですよ。例えば、ただ手本をもらって眺めていただけでは、よほどの熟練者でないと、その手本に込められたものは何も解読できません。そのまねをしようと手を動かし、筆を動かしてみて初めて様々なことが見えてくるのです。
 そして、その時に、欠かせないいくつかのポイントがあるのです。その内の二つを前回乗せました。復習してみると、


A 手本は半分に折って、自分の半紙の片側に置き、手本と自  分の半紙が完全にそろうようにする。

B 手本を見る回数を五倍以上に増やす。。じっと見るのでなくて、チラッと見る。それを何回も繰り返す。一文字に10回以上見る。


 この二つは、手本とうり二つに書くには欠かせません。<A>の方は、第一に、半紙の位置をそろえると言うことですが、見比べる目が、水平に動くための工夫です。半紙が不揃いで目が斜めに動くと忠実な模写は出来ません。この状態で手本と自分の書きつつある文字を見比べてみて、目線が斜めに動くときは大体において、既に手本よりも大きくなっているものです。  又、第二に、手本が離れすぎていると、手本を見てから自分の半紙に目を戻すまでに手本の記憶が失われます。慣れてきて、画像の記憶力が出来てくると良いのですが、それまでは、出来るだけ近い方が良いのです。画像の記憶は一秒経ったら無くなると思ってください。
 これと関連して<B>です。
二つのものを見比べるときに、目を何回も往復させることが違いを見つける最も有効なやり方です。しかし、これも慣れないと出来ません。どうなるのか?まず目を速く動かすことすら出来ず、強引に目を動かすと気分が悪くなります。
 出来ない人は、目を開けたまま、上下左右、斜めと目を出来るだけ早く動かす訓練をしてください。これは速読にも有効です。特に肝臓の悪い人は苦手です。又、目の筋力に偏りがある方はどちらかの方向に苦手が出ます(余談ですが、これを繰り返すと、肝臓は強くなります。老眼の予防回復にも。)
 それから、初登場の<C>。


C 手本を見ながらも、手を休めずに動かすようにする。


 初心者はこれが出来ないんですね。手本を見ると手が止まってしまう。楷書は良いですが、草書になったらそこいら中にこぶしが出来ます。そんなこと言ったって、無理に決まっている?いや、そんなことはないのです。人間は基本的にながら族です。そうでないと、生活できません。テレビ見ながら食べてるでしょ。運転しながら携帯かけてるでしょ(あっ、これは違反だ)。
 ちょっとの訓練ですよ。
でも、それでも苦手な人はいそうですね。では、そう言う人のために。
 目つきを変えてください。何だ、又変な事言うのか?まあまあ。これは字が大きくなりがちな人に共通しているのですが、そう言う人は、手本を見るときにその一部に集中しすぎているのです。
 例えば、車を運転していて、人が飛び出すかも知れないから注意しなさい、等と言われますが、まさかいつ飛び出してくるかびくびくしながら運転するわけにはいかないですよね。飛び出したときにとっさに判断して除けられればいいのです。しかし、どこから出てくるか分からないのだから、あらかじめどこかに注意を向けていることは出来ません。それで、とっさに判断が効く人は何が違うのか?目の使い方が違うのです。
 3D知っていますか?よく新聞に出ています。何が何だか分からないような絵が描いてあって、ある種の目の使い方をしてみていると、その絵から立体的な画像が出てくるというあれです。訳の分からない絵から立体画像が浮かび上がったときは感動ものです。その目つきですよ。この目の使い方には2種類あるのですが、特に、無限遠にピントを合わせる方の見方。どこにも注視していないのに、絵全体がどこまでもくっきり見えます。その目は武道でも使いますし、精神世界が好きな方にはこんな風にも言えます。人から出ているオーラを見るときの目つきだ、と。
 武道が分かりやすいでしょうか。『八方目』等とも言いますが、空手などで、相手に対しているときに、相手がどこから攻撃してくるか分からないのだから、足とか手とか、特定の部分に注意を向けるわけにはいきません。その時に、相手全体をこの目で見るのです。すると、不思議に心も落ち着いて、相手の瞬間的な動きが見えるようになります。ただ、それに対して、こちらが反応できるかどうかは日頃の鍛錬と言うことになるのですが。
 長くなりましたが、この目を練習してください。文章では難しいから、会員の方には直接指導になりますね。
 まずこの目で、手本、自分の半紙、全体を俯瞰する。そして、その気分で目を早く動かして見比べながら書くのです。
 当然、初心者は手が震えたりしますが、目が出来てきます。腕は悪くてもまず目が出来てこなければ進みません。
 前回の<1><2>は、筆を思うように動かすための練習です。筆の扱いはいくら目がよくても、回数による訓練が要ります。
 目が良くて、筆が思うように動いたら、臨書は楽しくなります。そして、そこで臨書の意味が見えて来始めるのです。一度に全部練習するのも大変ですし、必要のない方はそんなものかと思って読み飛ばしてくださっても結構です。でも、どれかに挑戦してみてください。何か分かることがありますよ。

 

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