第20話 撥鐙法、その後 岩井笙韻

前に、筆の使い方について述べたことがありますが、その後、撥鐙法について思うところがありました。いくつかの点を箇条書きにしてみると、


 1.前述したような基本通りの撥鐙法は、細字に最も向いている。
 2.小篆(篆書の基本)を丁寧に練習するときにも最適。
 3.筆の腹を使う書き方には別の要素が必要。
 4.丁寧に練習すると、自己啓発の基本であるリラックスと集中の訓練にも使える。


まだいくつかありますが、以上のことをもう少し詳しく述べてみましょう。
 <1>について。手首をたてて、前述のような筆の持ち方をすると、文字を書く地点は当然自分の目線に近づいてきます。ということは、半紙に字を書くとして、半紙の下半分くらいの位置に書く方が書きやすくなる。しかも、練習の時には横の線とか縦の線とかを長めに引いてはいるものの、小さく細い線を右手を浮かせて、細く書くことの条件作りに最適なようなのです。
 次に応用版として<2>。この基本の練習をしておいて、小篆を書くととても筆が安定して良い。というよりも、撥鐙法の筆使いで小篆を書くことが、非常に書の基礎練習になるのではないかという気がします。小篆は、文字の形のバランスが整い、一定の筆圧で書かれることを前提とします。ということは、手習いだけでなく、目習いにもなると言うことでしょう。実際、小篆を練習してみて、なかなか良い練習方法だと思いました。
 但し、<3>。柔らかい筆の腹を使って、太い線をいかして書くような書き方には向いていません。どちらかというと、良寛―会津八一というような方向での文字に威力を発揮する。理想を言うと、まず撥鐙法などで食筆の強さを出せるようにしておいて、次に速筆の力を鍛えるのが良いと思います。ただ、鍛えると言っても、そこには用筆の変化を学ぶと言うことだけでなく、<気持ちを変える>という練習も要ります。その点については後日。
 最後に<4>。これは長年にわたって考えてきたことでもあるのですが、書道を学ぶことで他の能力が上がるのではないかと言うことです。その中の大きな要素として撥鐙法があるとも言えます。どうしてかというと、今の自分をもっと伸ばそうとするには、頭の切り替えが必要になりますが、その為に必要なことが、

  リラックスと集中

なにしろ、現代人はリラックスが出来なくなっています。これが出来ないと、本当の意味では集中は出来ません。特に、肩こりがひどい(肩こりに関しては、これが世界的な動向かどうかはよく分かりません。アメリカには肩こりという言葉がないようです。)。書を学んでいる人にも相当います。あるいは、練習すればするほど肩が凝るなどということもあるようです。逆効果になっていますね。どうしてでしょうか。私は本当は、書でこのリラックスと集中が手にはいると思っているのですが・・・。
 <自己啓発>と書きましたが、最近は自己啓発、能力開発が大流行。書店での売れ行きに大きく貢献しています。しかし、その大半は同じ事が書いてあり、又、実際には大して役に立たないものが多いのです。書と絡めて、次回は才能開発と言うことについて考えてみたいと思います(といっても、次回かどうかは保証できません。緊急に書いておいた方が良いことを今思いついたので。)。

 

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